How to Play .SID Music

コモドール64のサウンド・チップSID(Sound Interface Device)で再生されるために作られた音楽(まぎらわしいですが、これもSIDと呼ばれることがあります)を聴くためのツールとサイトを説明していきます。この案内は、「SIDファイル」(後述)の再生を通して、SIDミュージックの広がりと、そこに存在する区別を確認することを目的としています。ハウツーを名乗ってはいますが、手順を追っていくチュートリアルではなく、あくまで一つの案内であることに注意してください。再生方法はエミュレーションに重点を置いています。

1. High Voltage SID Collectionへのアクセス

試しに動画サイトYouTubeで「Commodore 64 SID」と検索をかけてみると、それらしき大量の音楽に出会います。SoundCloudのようなサイトでも同様に見つけられますし、後で紹介することになりますがSIDミュージックのラジオさえあります。これらのサイトでコモドール64の音楽に触れつづけることは可能ですが、好みの音楽を見つけるには適しているとは言いがたいでしょう(それも楽しいものですが)。そもそもこれらの音楽はいったいどこから出てきたものなのでしょうか? さらに踏み込んで言うなら、そのリソースへ直接アクセスすることはできないのでしょうか?

答はイエス、です。多くの場合、それらSIDミュージックはHigh Voltage SID Collection(以下、HVSC)という、1996年に誕生した世界最大のアーカイヴを出所としています。このアーカイヴには、商業ゲームに使用されたサウンドトラックのみならず、アマチュアたちが制作した音楽が――リッピングできるものは可能な限り――収められています。近年は一年に二回更新され、2013年12月末の更新(V60)では総ファイル数が44,000を超えました。このうち、商業ゲームのサウンドトラックは全体の1%もありません。それほどに大規模なアーカイヴです(同時に全てのサウンドトラックが網羅されているわけでもありません)。膨大なファイルと未知のミュージシャンの名前を前にすると、あらためて、「好みの音楽に出会うにはこれが扉口として適しているのか」という疑問を持たれるかもしれません。しかし、どの程度SIDミュージックと関わるにせよ、まずはこの「進行形の」アーカイヴをフォローすることからすべてが始まります。

さて、このアーカイヴ・プロジェクト完全に有志によるものです。たとえばゲーム・サウンドトラックのリッピング一つ一つに、著作権保持者に対して許可を得ているわけではありません。収録されていない音楽が見つかり次第、次のアップデートの際に収録する、という方針が取られています。プロジェクト・チームの言葉では、HVSCは「フリーウェア・コレクション」です。パブリック・ドメインでもありませんし、クリエイティヴ・コモンズのライセンスによって提供されているものでもないことに、アーカイヴの存立性の困難を見出すことも可能でしょう。その本性上、著作権に関する境界は厳密と言い難く、曖昧であり、あるいは複雑ともいえます。そうではありますが、「完全」を目ざす唯一無二、代替不可能なアーカイヴということもあり、はやくから当時の制作者の側から参照されるようになりました(これはプロジェクト・チームがアーカイヴの精確さのため、ミュージシャンたちに積極的にコンタクトをとろうとしてきた努力の結果でもあります)。HVSCは半永久的に、「半ばオフィシャル」という地位を保ちつづけることでしょう。私たちは自由にこのアーカイヴの音楽を聴くことができます。この点に関する情報は、付属のドキュメントあるいはサイトのINFOを参照してほしいのですが、少なくとも一つ、覚えておいてほしいのは、営利目的での使用は禁じられているという点です。

High Voltage SID Collection: http://www.hvsc.c64.org/

はじめてHVSCにアクセスするのであれば、ダウンロード・セクションより、「Complete HVSC #xx」(xxはアップデート回)を選択して、全てのファイルをダウンロードします。ダウンロードした90MB弱の圧縮ファイルを解凍すると、細分化されたディレクトリに「<曲名>.SID」というファイルが配置されているのを確認できます。その拡張子名が示す通り、これがSIDファイルと呼ばれるものです。SIDファイルは、SIDミュージックを現代的なOSとマシンで再生することを動機に開発された、エミュレーション技術の進展によってもたらされたフォーマットです。今ではSIDファイルをコモドール64上で再生することができます――NSF(Nintendo Sound Format)ファイルをファミコン実機で再生するようなものです。先ほど、「リッピング」という言葉を使いましたが、音楽は大抵最初はプログラムとして提供されるか、もしくは別のプログラムに組み込まれています。

日本だと『ビデオ・ゲーム・ミュージック』(1984年)以来、ゲームミュージックのサウンドトラックの存在はよく知られていますが、欧米に視野を広げた場合、これは必ずも同時代的な現象とは言えません(ゲーム音楽やそのリミックスを収録したカセットテープがゲーム雑誌に付属することはありました)。実機録音のCDがいくつか発売されていますが、発売年をご覧になれば一目瞭然ですが、これらはいずれもゲーム発売から大分経って発売されたもので、作曲者やゲーム・メーカーではなく、別の編者のコンセプトによって編纂されたものが多数を占めていることをご了解ください。そのうちのいくつかを挙げてみます。

Input 64 / Enduro (2001)

Binarizone Music CDs (2007-)

SID Chip Sounds – The Music of the Commodore 64 / Robot Elephant Records (2012)

2. プレイヤーの選択

さて、SIDファイルを再生可能なプレイヤーを紹介していきます。ここで取った原則をあらかじめて述べておきましょう。

・対応OSは主にWindows。しかし、それ以外のOS用のツールも挙げる
・可能な限り最新のエミュレーション・エンジンを採用しているプログラムを選出する
・2013年の現在もアップデート及びサポートが継続中のプロジェクトであること

2.1 Sidplay/w 2.6 (WIN)

Sidplay/w 2.6

Sidplay/w V2.6

・サウンド・エミュレーションの進化と歩みをともにする、定評ある息の長いプレイヤー
・動作の軽さ。機動性に優れる
・プレイリストの作成には向いていない

Sidplay/w 2.6: http://csdb.dk/release/?id=103781

Sidplay/w 2.xは、旧ヴァージョンもふくめればシーナーのみならず一般的な(旧)コモドール64ユーザーに広く親しまれてきたコンパクトなプレイヤーです。ここで紹介するプレイヤーのなかでは、いちばん動作が軽いことが大きな利点として挙げられます。コンフィグの設定項目は、必要なものが備えられています。古風なファイルセレクタ式のインターフェイスは無骨にも見えますが、癖のない操作性で(ショートカット・キーが有効です)、起動していても、その他のアプリケーションのじゃまに感じることはないでしょう。

明らかな短所は曲の長さが分からないことです。SIDファイルの曲の長さを知るには、songlentghという、外部ドキュメントを参照する必要があります。シーク機能は実装されていませんが、二倍速と四倍速が可能です。最初はあまり気にすることがないでしょうが、フィルタの定義を変更できるのが大きな強みです。SIDファイル・プレイヤーでは音質の差異があるにもかかわらず、混乱を避けるためか、リヴィジョンの区別が一部無視されることがあるためです。

Sidplay/w 2.6は何にせよ、一つの標準的なプレイヤーであることに変わりはありません。

2.2 JSIDPlay2 2.5 (JAVA)

出典=http://kenchis.t15.org/jsidplay2/

JSIDPlay2 V2.5
出典=http://kenchis.t15.org/jsidplay2/

・簡易的なエミュレータまで実装した、多機能を徹底したマキシマム・プレイヤー
・オシロスコープの実装
・煩雑なインターフェイスと動作の重さ

JSIDPlay2: http://kenchis.t15.org/jsidplay2/

Sidplay/w 2.6がミニマム・プレイヤーだとすれば、JSIDPlay2はマキシマム・プレイヤーということになるでしょう。多機能ではありますが、その反面GUIは洗練されているとは言い難く、ふだん使用するプレイヤーとしては向いていないかもしれません。数多くファイルを聴いていくには、柔軟性を欠いています。しかし、今回挙げるプレイヤーのなかでは一番実用的なオシロスコープが実装されており、どちらかといえばコンポーザーあるいは解析者向けのツールであると言えるかもしれません。

2.3 foobar2000 SIDプラグイン (WIN)

foobar2000 SID Decoder V1.31

foobar2000 SID decoder V1.31

・プレイリストの並列的な操作と、それを支えるデータベースfoobar2000の作成機能
・曲の長さを初めとした、曲情報を一望できる意義は大きい
・コンフィグの弱さ

foobar2000 SID decoder: http://www.foobar2000.org/components/view/foo_sid

foorbar2000を使用しているのなら、すぐさまこのプラグインの恩恵を理解できるでしょう。foobar2000を導入しておらず、かつ多数のSIDファイルを操作したいのであれば、このプラグインのために導入する価値は十分あります。プレイリストによる楽曲の管理は、比較を容易にします。HVSCをデータベース化してしまえば、この作業はさらに捗ります。SIDフィルをサブチューン単位までばらして、その他のフォーマットと同じように、あるいは混在して扱えるのは驚異的とも言えます。

コンフィグは徹底的に簡易化されています。songlengthは参照できますが、他方、STILは参照できません。頭を悩ます項目がないのである意味で楽ではあるのですが、設定項目の変化による「テスト」を行うことができないので、Sidplay/w 2.6のような、別のプレイヤーを確保しておくべきでしょう。シーク機能は実装されていますが、ラグが大きく、まだ実用性に欠けます。

2.4 XMPlay SIDプラグイン (WIN)

XMPlay SIDプラグイン(revision 31)

XMPlay SIDプラグイン(revision 31)

・Sidplay/w 2.6とfoobar2000のSIDプラグインの中間的なコンフィグ設定
・XMPlayのWinampライクな操作性。EQと疑似ステレオで好みのサウンドに近づけられる
・再生時、曲冒頭のコンマ数秒がカットされる

XMPlay SID Plug-in: http://support.xmplay.com/files_view.php?file_id=504

XMPlayはその名の通り、FastTracker 2の.XMフォーマットに特化したプレイヤーです(XM用の最も精確なプレイヤーとして、4-matのようなヴェテラン・ミュージシャンからも評価を得ています)。ヴィジュアライザ、EQ、スキンといった要素に、Winampとの共通点を見出せますが、XMPlayは導入・削除が容易で、本体プログラムも小さくまとめられています。foobar2000よりカスタマイズのしやすいプレイヤーです。Winampほどではありませんがこのプレイヤーのためのプラグインもいくつかありますし、一部のWinampのプラグインにも対応しているのが強みです。

foobard2000のSIDプラグインよりは細かいコンフィグが可能ですが、中途半端のようにも感じます。しかし、SIDプラグインとして差異化しようとしている点は看取できます。JSIDPlay2ほどではありませんが、動作が若干重く、コンパクトなプログラムの割に機動性をやや欠いています。そうではありますが、プレイリストも作成可能ですし、試してみる価値は十分にあります。

2.5 Sid Player Pro(iOS)及びModizer(iOS)――スマートフォン用プレイヤー

SID Player Pro V2.9.56

SID Player Pro V2.9.56

Modizer V2.0

Modizer V2.0

・ラップトップ以上の携帯性
・増殖するSIDプレイヤーはWindows偏重の流れに一石を投じるか
・エミュレーションやコンフィグを重要視しない傾向がある

SID Player Pro: https://itunes.apple.com/us/app/sid-player-pro/id326157812

Modizer: https://itunes.apple.com/jp/app/modizer/id393964792

近年ではスマートフォン用のSIDプレイヤーが多数リリースされています。全てを試したわけではありませんが、決定的と呼べるものはまだ登場していないように思われます。これらのプレイヤーに共通する強みは、多くのSIDミュージック・ファンが待望した(今でもそうですが、独自に再生用マシンを制作する人たちさえいました)HVSCの携帯性を実現しています。Windowsマシンを外に運ばずとも、FTPサーバーからあるいはスマートフォン本体に移されたアーカイヴからSIDファイルを再生できるのは、少し前では考えられなかったことです。SIDミュージックに日常的に接したいのであれば導入する価値は十分にあります。

それぞれのプレイヤーが差別化に苦心している一方、古いエミュレーション・エンジンを採用していたり、コンフィグが簡易化される傾向が見受けられます。いずれも特徴的なSIDプレイヤーになりきれていない印象を得ます。まだ発展途上といったところでしょう。

2.6 SIDPLAY 4.1.4 (OSX)及びXsidplay 2.1.5 (LINUX)

出典=http://www.sidmusic.org/sidplay/mac/

SIDPLAY 4.1.4
出典=http://www.sidmusic.org/sidplay/mac/

xsidplay2 出典=http://sourceforge.net/projects/xsidplay2/

xsidplay2
出典=http://sourceforge.net/projects/xsidplay2/

・数は限られているが実用性は高い
・ユーザー人口に起因するサポート態勢の薄さ

SIDPLAY: http://www.sidmusic.org/sidplay/mac/

XSIDPLAY2: http://sourceforge.net/projects/xsidplay2/

Windows用ソフトウェアの多さに比較すると、MacOSやLinuxはデモシーンでは明らかにマイノリティに属します。サポートの「数」の多さに恵まれていないのは、C64シーンでも同様です。MacOSとLinux用のプレイヤーは実質的にこの二つに限られています。Sidplayは意欲的なプレイヤーではありますが、旧式のエミュレーション・エンジンを採用しているのが難点です。しかし、これらのOSを使用しているのであれば、おさえておくべきソフトウェアであることは間違いありません。

2.7 Playsid JS (JavaScript)

HVSC Browther Player α version

Online SID Player by Sasq Alpha version

・JSIDPlay2に続く、OSに依存しないオンライン・プレイヤー
・高速なサーチ
・現段階ではアルファ・ヴァージョン

Playsid JS: http://swimsuitboys.com/hvsc/

2013年12月に突如としてリリースされた、ブラウザで動作するプレイヤーです。HVSCのデータベースをサーチして、再生ファイルを選択します。最新のエミュレーション・エンジンを採用していることは評価できますが、今のところはサーチできることのほかには、目立った特徴のないプレイヤーです。

2.8 ACID 64 Player (WIN、要HardSID)

出典=http://www.acid64.com/

ACID 64 Player
出典=http://www.acid64.com/

・高速なプレイバックとシーク
・HVSCのデータベース化とサーチ機能
・HardSIDとSIDチップの入手の難しさ

ACID 64 Player Pro: http://www.acid64.com/

ACID 64 Playerとは、SIDチップをソケットに挿すことでSIDファイルの再生が可能になる(実際にはSIDチップのオペレーションが可能になる)HardSIDというUSB接続デバイス用のプレイヤーです。実機を用意せず、SIDミュージックの精確な再生を実現したデバイスとして、この種のものとしては一定の地位を得ています。一部のC64エミュレータ(VICE、CCS64)では、サウンド機能をこのデバイスに割り当てることが可能です。ラグを感じないプレイバックと、現段階ではどのプレイヤーよりも高速なシークが大きな長所です。HVSCのデータベース化することでサーチもできるようんあります。「リアル」SIDプレイヤーに必要な機能をほぼ備えています。

問題は、HardSIDと再生に必要なSIDチップの入手が困難であることです。HardSIDの公式サイトではその廉価モデルと言うべきHardSID UnoとHardSID UPlayが紹介されていますが、以前(2013年4月)問い合わせたところ、二つのUSBインターフェイスは生産中止との答が返ってきました。現状では、最も高価なHardSID 4U Studio Editionしか販売されていません。詳細は問い合わせてみてください。手もとにSIDチップがないのであれば、注文しなくてはなりません(公式サイトで現在販売されているのは8580のみ。6581は別にさがす必要があります)。

2.9 Sidplay64 v0.8 (要C64/C128もしくはエミュレータ)

126095

Sidplay64 V0.8
出典=http://csdb.dk/

・高性能な実機用SIDプレイヤー
・クロック・スピードを検出して再生スピードを自動調整する
・2SIDファイルの再生にも対応

Sidplay64 v0.8: http://csdb.dk/release/?id=126095

Sidplay64はコモドール64/128実機でSIDファイルを再生するためのプレイヤーです。使用しているマシンのクロック・スピード(PALあるいはNTSC)に合わせて、SIDファイルを本来のスピードで再生します。多数の拡張カートリッジ、デバイスにも対応しています。ファイルセレクタと同じ感覚で扱うことができます。

3. SIDファイルのプロパティ

理想に近いSIDプレイヤーを選ぶことができたでしょうか。Sidplay/w 2.6でSIDファイルのプロパティを見てみましょう。

Filename: D:\music\C64Music\MUSICIANS\H\Hubbard_Rob\Formula_1_Simulator.sid

Data size: 3264 bytes
File type: PlaySID one-file format (PSID)
File status: No errors
Name: Formula 1 Simulator
Author: Rob Hubbard
Released: 1985 Mastertronic
Load range: $C000-$CCBF
Init address: $CB40
Play address: $CB60
Number of songs: 2
Default song: 1
Clock speed: PAL
SID model: 6581
Player routine: Rob_Hubbard
Reloc region: Auto

ここに表示されていることから、少し気にしておいた方が良い基本的な要素だけ説明していきます。繰り返しSIDファイルに接しているうちに何となく分かってくる部分でもあります。

Data size: 3264 bytes

その名の通り、データの大きさを示しています。データサイズには音階、音の長さ、音色といった楽曲そのものに関わる情報だけでなく、再生ルーチン(ミュージックドライバ)も含まれています。非常に小さなファイルですが、SIDファイルはそれぞれが実質的には一個のプログラムと言って良い構造を備えています。

Name: Formula 1 Simulator

そのものずばり曲名ですが、ゲームのサウンドトラックの場合はゲーム・タイトル、デモの専用サウンドトラックの場合はデモの名前か、曲固有の名前を(ほとんどの場合)表しています。SIDファイルに複数の曲あるいはSE(サブチューンと呼びます)が格納されている場合は、アーカイヴのドキュメントのなかのSTILという曲に関連する情報を集めたテキストファイルに、サブチューンの正式名称が記されていることがあります。曲の再生時にSTILを自動的に参照するプレイヤー/プラグラインとそうでないものがあることに注意してください。Sidplay/w 2.6は前者です。この例では、「Formula 1 Simulator」はゲーム名を表しています。

Author: Rob Hubbard

その曲の作者です。ここにおける「作者」は、その曲を打ち込んだ(プログラムした)人物を指しています。著作権保持者をいつも指しているわけではないことに気をつけてください。その曲がカバーで作曲者(Original Composer)が別に存在する場合、STILに情報が記されていることがあります。

Released: 1985 Mastertronic

リリース年と、リリース元の情報です。ゲームの場合はパブリッシャーやデベロッパーが表記されています。あるグループの「リリース」(デモを中心とした全てのプログラムが該当します。これらを総称して「プロダクト」と言います)にその曲が使用された場合は、グループ名がここに表記されています。グループ名が複数にわたる場合は、一部しか記されていないこともあります。Mastertronicはイギリスのゲーム会社です。

Number of songs: 2

SIDファイルに格納されている曲の数です。SEも一つの曲(song)/サブチューンのうちに数えられます。

Default song: 1

ファイルを再生した際、最初に何曲目から始まるのかを示しています。1曲目からはじまるSIDファイルもありますし、そうでないものもあります。

Clock speed: PAL

PAL(50Hz)かNTSC(60Hz)、どちらかです。その曲がどこでリリースされたかによってクロック・スピードは決まります。たとえば、ゲームのサウンドトラックの場合、通常、アメリカで発売されたタイトルはNTSC、イギリスで発売されたタイトルはPALになります。HVSCでは、アメリカよりヨーロッパ圏に住むミュージシャンが圧倒的多数を占めます。したがって、ランダムにSIDファイルを再生した場合、ほとんどの場合、PALという文字を目にするでしょう。

SID model: 6581

Unknown、6581、8580、6581/8580という四通りの表記を目にすることになります。コモドール64/128はその生産期間にわたって、SIDチップのリビジョンを繰り返してきました。これはolder modelである6581とnewer modelである8580の二つに大別されます。前者と後者で音質的特徴が顕著に違うことから、「6581か8580か」という問題は、ミュージシャンにとってしばしばこれは作曲スタイルに先行するスタイルの選択の問題をも意味しています。8580用に作曲された曲が、6581で不正確に再生されることは、本意ではないわけです(その逆もまた然り)。Unknownは作者の使用したマシンのSIDチップが不明であることを表しています。6581/8580はどちらのチップでも再生されて良いという作者からの「任意」の意志表示です。
8580は別名R5(R = Revision)です。実は6581のR3とR4とR4ARの間にも顕著な音質的特徴の差異が認められるのですが(主にフィルター)、多くのプレイヤー/プラグインではこれを無視しています。Sidplay/w 2.6やJSIDPlay2ではフィルターの定義を選択可能です。この点をいかに重要視するかは、SIDをどう聴きこむかどうかという先に存在するかもしれない問題であって、さしあたっては「そういうものが存在する」とだけ捉えておいて構いません。リヴィジョンによる音質の比較には、実機録音サイトStone Oakvalley’s Authentic SID Collection (SOASC=)が役立ちます。

Player routine: Rob_Hubbard

再生ルーチンの名称です。判明していない場合は「?」になっています。ツールを使用して作られた曲でれば、ツール名が表示されています。いろいろなSIDファイルを聴くことを通して、再生ルーチン毎の差異に驚くことになるでしょう。

4. SIDミュージックをさがす

SIDファイルは膨大です。どこを入口とすれば良いのか戸惑うかもしれません。一から順に、という方法が実際には取りえない以上(確実に飽きてしまうことでしょう)、SIDに対するある種の選択、判断の感覚を磨いていくことが不可欠になります。ここではその指針やきっかけを与えてくれるものを紹介していきます。

4.1 ポッドキャスト、コンピレーション

いちばん簡単かつ有用なのは、ほかのリスナーによって編集されたコンピレーションを聴いてみること、目にしてみることです。HVSCはその規模の大きさゆえに、編集への欲望を喚起し続けてきました。

SIDミュージックのゲーム・ミュージシャンとしてふだん名を挙げられる人は非常に限られています。Rob Hubbard、Martin Galway、Ben Daglish、David Whittaer、Tim Follin、Jeroen Telといった人たち。彼らは間違いなく、西洋のゲーム・ミュージック史における巨人ではありますが、C64に限った場合、それ以外のミュージシャンについて言及されることが少ないのも、また事実です。C64におけるゲーム・サウンドトラックを「眺めて」みるには、 einokeino303がYouTubeで公開しているゲームコンピレーションが便利です。

c64 games sid music compilation
c64 games sid music compilation 2

myc64musicは同じくYouTubeで、ミュージシャンに焦点をあてたコンピレーションも作成しています。

myc64musicコンピレーション

これらは比較的、最近作成されたコンピレーションです。SIDミュージックだけでなく、「シーン・ミュージック」をまとめて紹介するには、ポッドキャストがよく用いられてきた手法です。BitJam Podcastは2007年に登場して以来、今日までコンスタントに更新が続けられている、デモシーンの音楽をテーマに沿って紹介するポッドキャストです。このなかから、SIDミュージックを特集した回を挙げます。

BitJam Podcast: BitFellas

Episode #29 – C64 part 2 – Back to the roots
Episode #43 – SIDs You Thought They Were Not – Multispeed tunes
Episode #64 – Very special C64 episode
Episode #120 – One Step Forward Back
Episode #144 – Mitch & Dane – The Jamming Duo
Episode #152 – Jeroen Tel Special
Episode #166 – HVSC Top 20 – C64 love

SIDミュージック専門のポッドキャストでは、既に更新停止しているものの、8Bit Mayhem Podcastが依然として資料性が高いものです。

8Bit Mayhem Podcast

The C64 Take-away podcastは、近頃はゆっくりとした更新ペースになっていますが、現在も更新が継続中です。リミックスも紹介しています。

The C64 Take-away podcast

One Man & His Micは複数のプラットフォームに跨り、主にゲーム・ミュージックを取り扱ったポッドキャストです。更新停止中です。

One Man & His Mic

この一年間で精力的に更新が続けられているポッドキャストであるImmortal C64はその名の通り、SIDミュージックに限定した選曲をしています。

Immortal C64

私自身もコンピレーションの作成を通して、ゲームミュージックからはじまり、デモシーンの方へとSIDミュージックの調査の範囲を広げてきました。

https://akaobi.wordpress.com/compilation/

4.2 ラジオ

SIDミュージック専門のネット・ラジオも存在します。The SID Stationをのぞけば、いずれもミックスが選曲に含まれています。このなかではSLAY Radioは1999年に始まった最も息の長いラジオです。過去の”show”をダウンロードすることもできます。

SLAY Radio

Radio 6581

Radio PARARAX

The SID Station

4.3 SoundCloud

ここ数年、SIDミュージシャンがSoundCloudに自分たちの曲を投稿するようになったのは注目すべき現象です。彼らのアカウントを一部紹介します。個々のミュージシャンに興味が湧いた場合、フォローしてみるのも一考です。それぞれSIDミュージックがどのような地位を占めているのか、その違いを観察することできるでしょう。

Chabee

Dane

dEViLOCk

Stainless Steel

SIDwave

NecroPolo

4.4 チャート

どのような音楽が海外では好まれてきたのか、知りたい時もあるかもしれません。その際には、チャートが参考になるでしょう。チャートの性質上、明らかな偏りが見られます――ここに最良のものが結集されていると結論づけることはできませんが、ある「サンプル」にはなるでしょう。またここに紹介するチャートや、YouTube等に投稿されている「Best~」といったランキングには多くの場合、最近のミュージシャンが抜け落ちていることが多いです。SIDミュージックをフォローしていくと、コンペティションによるチャートも目にします。

HVSC’s Top 100 SIDs (2000)

The All-Time Top C64 Game Tunes (2008)

4.5 CSDbを利用する

SIDミュージシャンは現在も作曲を続けています。現役と言えるミュージシャンは、100人はいます。その成果のほとんどは、The C-64 Scene Database(以下、CSDb)でフォローすることが可能です。ここに集積されたプロダクトは、HVSCのアップデートに必ず反映されます。リリースのフォーマットは最初、SIDファイルではなく、PRGフォーマットで提供されることがほとんどです。PRGとはCOMやEXEような実行形式ファイルです。PRGファイルをロード可能なプレイヤーとそうでないプレイヤーが存在するこに注意してください。また。ここで紹介したプレイヤーでは、JSIDPlay2をただ一つ除いて、実行したした際の画面を表示することができません。しかしながら、PRGファイルの実行には、エミュレータの導入を推奨します。優れたエミュレータがいくつか存在しますが、現在はVICEが最も多機能かつ安定したエミュレータです。MacOSでも利用可能です。

CSDbでは一年を通してさまざまなプロダクトがリリースされます。そのなかにはC64 Musicのほかに、C64 Music Collectionというものがあります。ディスク・メディアはあるミュージシャンの発表媒体として利用されることもあり、日本の同人音楽におけるミュージック・ディスクとの共通点を見出せます(そのように呼ばれることもあります)。しかし、その多くは、リッピングされた音楽ファイルの集積です(前者の最初期の例としては、Georg FeilのSynth Sample (1984)がよく知られています)。80年代中期には、はやくもゲーム・サウンドトラックのリッピング・コレクションが現れました。こうしたコレクションのコンセプトは、察しのように、HVSCに受け継がれています。

CSDbに注目すると、アーカイヴの構成要素に出会えるだけでなく、SIDミュージックが今まさにどのように変容しつつあるのかを確かめることができるでしょう。

5. 巣穴の前で

HVSCは多数の入口の存在する巣穴のような迷宮的アーカイヴです。そのなかで迷うことは大きな楽しみです。HVSCをどのように役立てるか、私たちは全てを発見したわけではなく、入口の前に立ったばかりです。ツールをたずさえてアーカイヴへ潜りましょう。

Leave a comment

Filed under article, c64

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s