“Finding out your own style” – Interview with Hermit 

先にマニュアルを翻訳させていただいた、SID-Wizardの制作者Hermitにメール・インタヴューを行いました。
彼がトラッカーに対して求める「フレキシビリティ」とは、また彼の明晰きわまりない知性にもふさわしい言葉ではないでしょうか。

(赤帯)ハイ、Hermit! まずは簡単な自己紹介からお願いできますか。

(Hermit)ハイ、赤帯。ハンガリー在住のMihaly Horvathです。またとない機会をどうもありがとう \o/

デモシーンとの出会いはいつ、どこでしたか。
あなたの制作行為のモチヴェーションとなってきたグループ、シーナー、プロダクトを教えて下さい。

コモドール64(以下、C64)は90年代後半に一度手に入れてる。でも2002年頃に売ってしまったんだ。それから2008年になるまで、C64に途轍もなく大きなファンベースがあることには気づなかった。
2008年にC64を買い直した時(ありがたいことに、アナログ・シンセサイザーのサウンド・チップがあることが分かったからね)、インターネットを利用し始めて、この愛しいマシンのために現在も素晴らしいプロダクションを作りつづけている人たちに出会って、驚いたね。
以前、友人から(特にハンガリーの)デモの入ったフロッピーを受け取ったんだけど、その中にあったChorusRevolutionProfikMergezo Anyag 3が僕のフェイバリット。どちらも90年代中期のデモだ。


Revolution / Chorus [1994]

SID-Wizardの前に、あなたは3SID trackerをコードしていますよね。あなたの人生においてSIDは動かしがたい、重要な地位を占めているように見えます。このチップを用いて作曲するだけでなくて、ツールまで作ってしまう大きな理由とは何でしょう?

3SID trackerをコードした主な動機は、2008年に自分のバンドのために作曲するためだったんだ。その時は3トラック以上は必要だろうという思いだった。コードし始めたのも、C64の音楽をリリースすることに焦点を絞っていたわけじゃなくて、自分のバグだらけのPC(怒りのあまり、しばらくの間僕は家でPCを使ってなかった)よりも速く、簡単に、もっとちゃんとした方法で作曲することが目的だった。
その後になって僕は、3トラックしかないことが、コンポーザーの観点からすると興味深いチャレンジであることが分かった。SIDから良い感じのサウンドをひねり出す方法もはっきりと理解したんだ。
3SID trackerよりもっとフレキシブルなトラッカーが必要になって、僕はまずDMC[Demo Music Creator]の調査から手をつけた。同じようにして他のSIDツールでも実験をした結果、どれも自分にとっての本当に究極のツールと言えないことが分かった。僕の調査はX-SIDで終わった。このツールはどうにもこうにも長いトラックを作れない他は優れたツールだった。……以上が、常識にとらわれず、必須の機能を全て備えた自分自身のトラッカーをコードしようという考えに達した経緯さ。

scrnsht1

Hermit 3SID tracker [2008]


喜ばしいことに、SIDが30周年を迎えた後でも、今日も多くのSIDトラッカーが開発中です。SDI、GoatTracker、CheeseCutter、CRD-Tracker、Heinが計画しているもの(それに、defMON?)等。
SID-Wizardはこれらのトラッカーと開発の方向性がどう違うのでしょう。あなたがC64ネイティヴの総合的なツール(a comprehensive native C64 tool)と呼ぶSID-Wizardの特色を教えて下さい。

トラッカーには素晴らしいものがたくさんある。プレイヤーのコード・サイズやスピードの制約を被る一方で、基本使用の上に、革新的な機能(コード[SID-Wizardではコードの変更に合わせてインストゥルメントを作成し直す必要がない]や、キーボード・トラッキングのような)を付け加えているのが、SID-Wizardの主な特徴だね。エディタに関して言うなら、大きなスクリーン・フォーカス(トラック毎に25行)と、同じ行に通常可能であるよりも多くのエフェクトを加えられる機能が欲しかったんだ。
大事なことを一つ言いそびれたけど、C64実機で動作し、XMやMIDのような他のフォーマットのインポート/エクスポートができたり、SNGフォーマット[GoatTracker独自の作業ファイル用のフォーマット](気づいているだろうけど、SID-WizardはGoatTrackerと多くの類似点がある)のインポートができることも、このツールの特徴だ。

SW14snap

SID-Wizard 1.4 [2013]


ミュージック・トラッカーについてお聞きしても良いでしょうか。日本でもヨーロッパ程数は多くないにせよ、Milky TrackerやMODPlug TracerやRenoiseを利用するミュージシャンがいます。MathmanのLSDjが日本人によって長い間使われ続けていることも挙げておかなくてはならないでしょう。
ですが、私見では私たちにとってトラッカーは、今なお知られざる、謎めいたツールです。あなたはFastTracker 2で曲を作られていますよね。ミュージック・エディタとしてのトラッカーの長所とは何でしょう?
ミュージック・マクロ・ランゲージ(MML)についてはどう思われますか。MMLは日本では8bitの時代よりポピュラーな作曲の手法です。この傾向=潮流はとどまるところを知りません(NES Sound Driver & Librarymck、あるいはMMLTalksMMLshare等)。

うん、C64ではなくて、自分の最初の386マシンでFastTracker 2を動かして、僕はトラッカーなるものに親しくなったんだ。
その後、シーケンサーのピアノロール・ツールでも作曲した。ピアノロールもトラッカーも、両方とも入力方法に各々の長所があるけれど、トラッカーの方が音楽内容(ノート、エフェクト)に関してよりコンパクトな概観を与えているし、トラッカーには定義に従ったオートマティックな数量化[quantization]がある。加えてマウス要らずなこと、言うまでもなくこれこそがC64実機でトラッカーを動かすことの利点だ。他方、ピアノロールだとコード・プログレッションやヴォイスリーディングが上手く視覚化されている。
本質的に、FastTrackerライクのトラッカーには柔軟性[flexibility]という面があるけれど、C64のトラッカーに後れをとっている[C64トラッカーに分がある]。例えば規格化されたアナログ合成[synthesis]や対応関係を保ったエフェクトの欠如。あるいはトラックごとのオーダーリストの欠如。これがないために、C64と比較するとタスクをコピー/ペーストするのにたくさんのパターンが必要になってくるし、メモリの空き容量不足が起こる。

おそらくトラッカーやC64ネイティヴのツールに馴染みの薄いユーザーの多くが、ショートカット・キーに戸惑うことが予想されます。こうした人たちのために、何かアドバイスはいただけますか。

ああ、かなり前から、普通のユーザーはマウスに馴れちゃったんだ。だから一目見ただけではそれが奇妙に見えることは僕も理解している。
基本的な作曲なら、たくさんのキーを覚える必要がないのは朗報と言えるね(そのトラッカーにおいてキーが上手く定義され、論理的に配置されているならばの話)。マウスをサポートしているトラッカー(FastTracker 2、GoatTracker)であれば、キーを使って作業するのはずっと簡単になる。キーを使うことの利点の一つは、馴れた時には、高速なワークフローになるのが歴然であること。二本の指+マウス操作の代わりになるのは即座に使える十本の指だ……それでもどちらかが良いかは人によりけりだろう。

あなたはSID-Wizardがオープンソースのプロジェクトであることを繰り返し強調されていますよね。このツールはGoatTrackerやSDIのような他のトラッカーから機能を引き継いでいます。デモシーンでは第三者が彼の好むツールを訂正したり、手直ししたりすることは珍しいことではありません。私はSoundMonitor、DMC、JCHエディタのようなツールのことを思い出しています。クラックもまた、デモシーンにおける調整(adjustment)の産物(複製)です。こうした伝統についてどうお考えですか。

オープンソースの心意気を持った一人の男として、(特にLinuxに切り替えてからは)あらゆる種類の協同/リファクタリングは僕の好みとするところだ。誰しもそれぞれ少しずつ違った面から一つの問題を見るんだ。そういうこともあるし、ユーザー・フィードバックというのは僕にとって重要なんだ。自分が思いもしなかったアイデアを与えられる時は、僕と一緒にプログラムを書いているようなものだ。
けれども、開発者はオープンソースのプロジェクトには慎重でなければならない。一つのプロジェクトが多くの手に渡っているなら、ベースとなるコードを堅固にし、いくらか共通の目的を持つことが本当に大事だと思う。そうしないとプロジェクトはバラバラになってしまう。僕はまず最初に安定版である1.0を開発することでこうした問題を解決し、中心化されたオープンソースの開発が可能になったんだ。
将来有望なプロジェクトに参加することはその人に強い決意を要する。SID-Wizardでは効果的に注釈のついたソースコード、フローチャート、ソースファイルの従属グラフをドキュメント化することで、より簡単にしようと試みている。

SIDミュージックの未来をどのように想像しますか。私にとって昨年は、2SIDの進展が印象に残りました。Conradによる2SIDのミュージック・コレクション「SID Dualux」はSIDシーンにとって大きな達成だと思います。SDIプレイヤーの2SIDヴァージョンも良好そうです。
TODO.txtを読み、SID-Wizardの2SIDヴァージョンも計画中であることを私は知っています。加えて、あなたにとってdigi[4bitのデジタル・サンプル及び、そのテニクニックを指す]はSIDの重要な可能性がどうかが知りたいのですが。

ステレオSIDの曲は僕も好きだけど、標準的なやり方では作成できないのが、大きな問題だ――利用するメモリ・アドレスについても、2SIDをステレオで使うか、モノで使っていくかの共通見解もない。様々な2SIDの曲を正しく再生するために、常に自分のツールを、例えばVICE[コモドール64エミュレータ]を設定してやる必要がある。もし君の曲に合った正確な設定ができない人がいて、変なアウトプットを耳にしようものなら、Voteで低い点を入れられるだろう。
実際のハードウェア上では、二番目のSIDのアドレスを選択するための簡易的なメニューも存在しないし、この問題はさらにずっと難しい。
うん、僕はSID-Wizardでの2SIDのサポートを計画しているけど、より多くのメモリとラスタータイムが必要だろうし、パターンやインストゥルメントの最大数は制限されるだろうね。近い将来サポートが実現することがあった際は、2SIDのオペレーションに特化した別個の実行プログラムになるんじゃないかな。
正直に言うと、僕がdigiを利用した曲を好きになったことは一度もない。一つの理由は、僕の好む8580モデルではdigiが鳴らないし[silent]、また貧弱な4bitクオリティであること、その他のクリアな響きのSIDサウンドに対して歪みさえもたらすことも[またその理由だ]。この点では巧妙な8bitや12bitのdigiチューンはずっとましだけれど、そうした曲はメモリやCPUタイムを過剰に消費する。僕からすると、digiサンプリングはC64の強みとは言えない。

ディストリビューションに関する質問です。GoatTrackerのリリース以降、C64シーンの外でC64のミュージック・トラッカーを使う人たちもいます。そうした人たちは、自分たちの曲をSoundCloudやChipMusic.orgでリリースしています。また時々、YouTubeでHigh Voltage SID Collection(HVSC)に収録されていない曲に出会ったりもします。
C64シーンの外であなたのツールが使われることについてはどう思いますか。

時々、SID-Wizardが世界中でどんな風に受け入れられているいかを見るために、気まぐれにグーグルで検索をかけてみるんだ。(C64と結びつきのない)「アウトサイダーの」人たちがSID-Wizardを使って作曲しているのに出会った時は驚いたね。彼らの違ったアプローチが違いを生みだし、時折ワイヤードなC64ミュージシャンにアイデアを与えることもある。レトロな感じや、明快さ、何でも構わないけど、SIDサウンドが好きな人たちに出会うのは良いものさ。

あなたの目から見た、昔と今のハンガリー・シーンについて教えていただけないでしょうか。素晴らしいハンガリーのミュージシャンを知っていることもあり、ハンガリー・シーンに関心がありますし、もっと知りたいのですが。

既に話したように、僕は昔からシーンにのめり込んでいたわけではなくて、(Arok Partyのウェブページのような)マルチメディア・ソースやプロダクションを通じて、パーティに参加するのがとても楽しい経験に違いないと分かったんだ。
時は過ぎたけども、主要な顔ぶれは今もって健在だし、僕の短い経験によれば、近頃はハンガリーのデモパーティには100~200人が参加してるんじゃないかな。僕のホームタウンのDebrecenでは、聴き及ぶ限りでは昔からシーンが活発らしいんだけど、あいにくイヴェント事はないんだ。でも、去年は仲間のシーナーと一緒にデモを視聴するイベントを企画したんだ。今年も同様に開けるといいね。10人から20人が参加すると思えば、努力する価値はあるよ。

あなたはSIDrip Allianceのメンバーでもありますね。メンバーがどんなにイカしている奴らか教えて下さい。

その通り、メンバーはあらゆる点で良い連中だよ。このグループでそれまで経験したことのない、本物のチームワークを僕は経験できた。
良いやつらだし、かつ鉄壁のミュージシャンで、スタジオ・エキスパートでもあるから、SIDrip Allianceにいることができて幸せだね。
もし僕たちがお互いに近寄って暮らすなら、何百キロも離れることはありえないだろう……[離ればなれになりようがない程にメンバーの結束が固いという程の意味…訳者]。

SIDrip Alliance playing From First To Last / Ninja at Function 2011


私はあなたが単にノスタルジアからC64を使い続けているのでない点を非常に興味深く感じています。あなたは「モダンな」コンピュータに疑問をお持ちですよね。日本にもレトロPCの愛好家の数多かれど、あなたのように大気汚染について言及する人を見ることはほとんどありません(SID-Wizard User Manualの末尾参照)。
あなたが問題の解決に準備を進め、計画を立てているのはブリリアントな報せであると言えます。あなたの今日のコンピュータに対する意見はもっと多くの人々に知られるべきだと私は思います。(準備中の)FPGAプロジェクトについて教えていただけませんか。

自分がPCで経験することは、その多くが本来そうあるべきよりも煩雑になってしまっている。この産業の指示するペースには「ご苦労さん」と言いたい。デバイスの効率を改善するために、根底から全てを考え直し、整理し、単純化するための時間が、エンジニアにはないんだろうと思う……けれどもそうした風向きも変わってきている。例えば、2011年に発売されたMac miniは理論上では10~20ワットの消費電力だ。
とはいえ、コンピュータによってもたらされる世界的なCO2の放射は自動車/工場と比較するとごく僅かなものだと言う人もいるし、世界的な温暖化の主要な原因とは程遠い(ところでこの事実について考える時は、人口過剰やコンピュータのリリースサイクルの短サイクル化を考慮しなくてはならない)。
その一方で、デスクトップPCは本当に速く、たちまちのうちに一日の決まった作業のほとんどを処理する必要がある(「13人のドワーフ」というやつだ)。特にデバイスに多額のお金を支払った後は、誰であれこの恩恵を受けるに値する。こうしたことは、ソフトウェアの効率性の向上(例えばKolibriOS)か、やあるいは同等のハードウェアによって達成可能となる。今日の品質は高速なCPUを必要としている。ほとんどの人――多くのプログラマーでさえ――はCPUに可能な速度と比較すると、容量性のビットセルが依然として遅いことを知らない。だからメモリはSRAMキャッシュ(CPUチップの表面の大部分を占めている)とパイプライン方式その他の手助けを受けている。この問題に姿を現すマルチタスク動作は無力だ。
ある解決方法によってより高速な、なおかつ十分な大きさのRAMが発明できたのなら、CPUは本来あるべき速さで動かすことができるだろう。

この問題に対する真の解決方法は多くのCPU-RAMのペアを並列クラスターで[in a cluster in parallel]で動かすことだ。近頃のFPGA/ASICは数百MHzのクロック周波数で並列処理を実験するのに優れたプラットフォームだ。
だから実際の物理的な制約はないんだけれど、本当のパラレル・コアのプログラミングは一つの挑戦であることが分かっている。この方面では一定の研究者もいないんだ。パラレル・テクノロジーの他の優れた面としては、オーヴァークロッキングがなく、放熱が少ないことがある。僕はまずは手始めに、手軽にプロセス/スレッド・レヴェルで並列処理をつかまえるだろう。マルチタスク動作を処理するコンピュータは、ふとしたことから一つまたは複数のプロセスがクラッシュした際、マシン全体のフリーズを防ぐことができる、プロセスごとに専用のCPU-RAMのコアを持つ必要がある。

これが記事ではなくインタヴューであることを考慮すると、僕は喋りすぎてしまったかもしれないね。今すぐに、この話題にこれ以上深入りすることはよしておこう。
幸いにもスタジオ・レコーディング用の信頼のおけるマシンを持つために、優れたハードウェアとソフトウェアの組み合わせが現存することが分かったんだ。[その組み合わせは]OSX(Core Audioを含む)のインストールされたMac mini 2011(このモデルは静かで、消費電力も少ない)+サウンドモジュールはFocusrite PRO firewire+Reaper(小さくまとってはいるが、ユーザーフレンドリーかつ総合的なDAW)
FPGAのパラレルPCプロジェクトは緊急を要することじゃない。昨年に始まったことだからね。でも今年はホビー・プロジェクトとして続けていくだろう。もしかしたら運が良ければ、同じようなことを考え、このオープンソースのハードウェア+ソフトウェア・プロジェクトに貢献したいと考える人たちを見つけ出せるだろう。

あなたの音楽の幅広さには常に驚かされています(最近のリリースMagyar Népzenékも私のお気に入りです)。1998年にリリースされた(他人の曲により構成された)ミュージック・コレクションは、あなの作曲スタイルの多様性に響いてるように思うのです。
またあなたのような、サミュエル・アドラーやアルノルト・シェーンベルクについて語るシーナーがいようとは想像だにしませんでした。あなたにとって、音楽理論とは何なのでしょう?

誤解のないようにお願いしたいけども、Mirageに収められた曲は自分のものじゃないんだ。そのディスクに入っている何点かの初期の大変うるさい「曲」は僕のだけどね……この三枚のミュージック・ディスクの曲は、当時自分の所有していたフロッピー・ディスクに入っていたイントロやゲームからリップされたものだよ。なぜって、宿題をする時にこれらの曲を聴くのが大好きだったんだ。
事実、僕はほぼ全ての音楽スタイルが好きだし、ほぼ全てのジャンルから、作曲の刺激を受けている。その全てが、正しいやり方でなされているなら、固有の美しさというものを備えているんだ。それゆえ色々なジャンルのなかでも、僕の大好きな音楽スタイルはフュージョンだ。私見では、ジャンルというのは巧みなミュージシャンが気持ちの良い音を見つけるためのレシピみたいなものだ。けれど、仮にあるミュージシャンが直感から何か新しいものを創造できるのなら、それを無視すべきじゃない……。
音楽理論にしても同意見だ。人々がより簡単に速く、うまくやるめたのよく集められた規則なんだ。でも音楽理論では音楽のニュアンスの多くは記述されない。音楽的才能の本質を得るための、小説にように読むことができる、人の経験に拠って書かれた本がもっとあれば良いなと思うよ。
ところで(人生において音楽において)自分自身のスタイルを見出すことは最も重要なことだろうし、可能な限りの実験を通して実現可能なものだろう。最近の人たちは、じっくりと腰を据え得ることにあまり時間を割くことがないし、何かの物事に集中することもない。どっちにしろ僕たち自身が「マルチタスキング」になっているんだ。

Mirage

Mirage [1998]


チップチューンあるいはチップ・ミュージックについてお尋ねします。
WitchMasterは彼の制作したマニュアルのなかでチップチューンという語を用いていますが、この語がC64シーンで使われ始めたのは比較的最近のことであるように思います。
Jeroen Telのような人がチップ・ミュージックのオリジネイターであると、私たちは言うことができますが、しかし彼自身は(チップチューンやチップ・ミュージックの)シーンから距離を置いているように見えます。こうした音楽からあなたがインスピレーションを得たことはありますか?

僕の知る限りでは、Rob HubbardがSIDチップを(プログラミングをし、作曲した)それに相応しく利用した最初期の人々のうちの一人だね。
Jeroen TelやC64初期の全てのコンポーザーは優れた技術のエキスパートであったと同時に、彼ら自身のスタイルの発明者だった。
「chip-music」という名称が古くから使われていたものであるかどうか、僕には分からない。だから、この点で曲の古い、新しいを区別することはできない。SIDチップでの作曲のために聴いた音楽だけじゃなくて、作曲をベースとした生楽器のために聴いたSIDミュージックにも僕はインスパイアされている。
Chip tuneは僕の作曲スタイルに影響を及ぼしたし、スタイルを形作りもしたけど、曲作りにもっと意識的になるために、作曲法については依然としてもっとたくさんのことを学ぶ必要がある。

あなたはコーダーであり、ミュージシャンであり、またグラフィシャンでもあります。先ごろ、あなたっはクロスプラットフォームのグラフィック・エディタであるHermIRESをリリースしました。あなたにとって「グラフィック」とは何だろう?

10歳そこらの子どもの頃の何年間は、画家になりたいな、と考えてたんだ。とても運が良いことに、子どもの時には素描で賞を獲ったこともある父から素描/絵画の手解きを受けることができた。父は、ブック・カバーなんかも描いていたね。小学校の授業で、僕はその他のグラフィックの技術(パステルや、エナメル[smalto a fuoco]、リノリン・エングレーヴィング)に出会って、自分の作品の一つは学校のコンペティションで一等になったこともある。
C64を手に入れると、僕にはそれが手を「汚す」ことなく描けて、修正も容易な、とても扱いやすく身近な道具になったんだ。けれど、それ以後はパステル画や油絵を描くことは時々になってしまった。

Castaway

Castaway [2013]


最後に一言お願いします。

まず最初に、僕の意見(オピニオン)についてあなたが尋ねたとき、口数多く感じたならお詫びします。でもそれこそが僕の「スタイル」なんだ :)
繰り返しになってしまうけど、このような機会を与えてくれてありがとう。日本にいる人からインタヴューされて本当に嬉しいよ。
ハンガリーより、皆様に幸多からんことを!

あなたもね。日本から今後ともよろしく。あなたのご厚意と励ましに深く感謝します。

Hermit (CSDb)
Hermit’s Home

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Filed under c64, interview, translation

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